テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第1章 第一話 【桜草】 桜草の出逢い 

「うっ、痛―」
 向こうでも同じようなうめき声が上がっている。先に立ち直ったのは、相手の方が早かったようである。
「済まぬ! 大丈夫か?」
 明姫は首を振った。
「はあ、私はたいしたことはありませんが、あなたの方こそ」
 そこでハッとして、明姫は大いに狼狽えた、
「大変、書物が」
 大切な書物を包んだ風呂敷が解け、本が辺りに散乱している。明姫は狂ったように我を忘れて本を拾い集めた。確か書庫から借りてきたのは五冊だったはず。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ