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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第4章 第一話【桜草】 蜜月と裏切り

 まだ幼い王子が一人、誰もいないあの殿舎で泣いている姿が見えるようだ。
 王たる者は孤独だと聞いたことがある。どんなに大勢のお付きの者に囲まれていても、常に玉座に一人で座っていなければならない。ユンは幼いときには母の愛を欲しても与えられず、長じては王として常に孤独であらねばならなかった。
 王として生まれて、幸せだと思ったことがかつて一度でも彼にあったのだろうか。そして、そんな彼の悲哀と孤独を心から理解している人が、この宮殿には一人でもいるのだろうか。
 これからもずっと彼はたった一人で生きてゆかなければならない。そんな彼のことを考えると、あれほど手酷く騙されたというのに、何故か心が痛む。

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