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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第7章 第二話 【桔梗の涙】 異変 

 当然だろうと思う。話しかけても微笑みかけても、何の反応も返さない女など一緒にいても面白くも何ともないだろう。
 だが、自分はけして王を嫌いだから、応えなかったのではない。逢えば逢うほど好きになっていったから、余計に話せなくなったのだ。彼女が身につけさせられたお妃教育の中に、恋愛したときの方法は入っていなかった。
―好きな男に見つめられたときは、どうすれば良い? 愛してやまない良人に話しかけられときには、どう応えれば良い?
 考え出すと余計に口は鉛を飲み込んだように動かなくなり、所在なさに取り澄ました表情を浮かべて、つんと顎を逸らしているしかなかった。

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