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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第7章 第二話 【桔梗の涙】 異変 

 王の心が昭容にないことは判りきっていたから、何とか平然としていられたのだ。王妃が心から憎むのは、人形のように良人に抱かれ子を身籠もるだけの女ではない。王が心底から愛し、心を傾けた女なのだから。
 ところがである。その王の心を奪った女がついに現れたのである。
 王妃が物想いに囚われていると、孫尚宮が姿を見せた。
「中殿さま。国王殿下がお越しにございます」
 孫尚宮は四十歳ほどで、実家にいる母とさほど変わらない。十五歳で慣れない宮殿に入ってきた日から、陰ひなたなく、まめやかに仕えてくれた。

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