身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第8章 第二話 【桔梗の涙】 陰謀
「私のために、人がひとり亡くなりました。こんなことは、あってはならないことなのに」
明姫の白い頬をひと雫の涙が流れ落ちた。
「淑媛さまのせいではございません」
楊尚宮の瞳には憐憫の情が浮かんでいる。
しかし、明姫にはそう容易くは割り切れなかった。
確かに成女官の死は明姫の罪ではない。彼女がたとえどのような甘い餌を示されたとて、怖ろしい謀に乗らなければ良かったのだ。だが、人の心は弱いものだ。ましてや、自分のためではなく、大切な家族のためになると甘い科白を囁かれれば、その気にもなるというものではないか。
明姫の白い頬をひと雫の涙が流れ落ちた。
「淑媛さまのせいではございません」
楊尚宮の瞳には憐憫の情が浮かんでいる。
しかし、明姫にはそう容易くは割り切れなかった。
確かに成女官の死は明姫の罪ではない。彼女がたとえどのような甘い餌を示されたとて、怖ろしい謀に乗らなければ良かったのだ。だが、人の心は弱いものだ。ましてや、自分のためではなく、大切な家族のためになると甘い科白を囁かれれば、その気にもなるというものではないか。