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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第10章 第二話 【桔梗の涙】 切ない口づけ(キス) 

「良いかい? どんなことがあっても、生きなければならないよ。私のよく知っている明姫は、何が起ころうと最後まで望みを棄てずに前に向いて進もうとする女なのだから」
 その口調はいつもの王らしいものではなく、初めて出逢った頃、まだ〝集賢殿の学者〟だと名乗っていたときのものだ。
「判ったわ。あなたの言うとおり、何があっても諦めないわ」
 これもまた、あの頃のように〝ただのユンと明姫〟のときの口調で言う。
 明姫が存外にしっかりとした声で応えると、彼は安堵したかのように微笑みを浮かべた。
「それじゃあ、食事だけはきちんとするんだぞ?」

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