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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第10章 第二話 【桔梗の涙】 切ない口づけ(キス) 

 今夜、義禁府に忍んで出かけたときも、黄内官はずっと牢のある建物の入り口で見張っていてくれた。
 深々と頭を垂れる黄内官に、ユンは言った。
「どうか顔を上げてくれ、黄内官」
「殿下」
 黄内官が面を上げた。
「ありがとう、爺や。そなただけだ。この広い宮殿で私のことを心底から案じて物を言ってくれるのは」
 今も黄内官は生命賭けの諫言を王に試みたのだ。仮にユンが真に女の色香に血迷った暗愚な君主であれば、王の命に逆らったとして、その場で黄内官の首は飛んでいただろう。

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