テキストサイズ

身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第10章 第二話 【桔梗の涙】 切ない口づけ(キス) 

「私―」
 自由の身になったら、彼に話したいこと、言いたいことがたくさんある。明姫は立ち上がろうとして、すぐに均衡を崩した。その身体が傾いだのをユンが抱き止める。
「私、立てないみたい」
「明姫」
 ユンの端正な面が曇った。
「身体が弱っているからだ。大丈夫、私が後宮まで連れていくから」
 許してくれ。ユンは呟くと、抱き上げた明姫の髪に顔を押し当てた。
 皆が固唾を呑んで見守っている中、国王は弱り切った寵妃を抱きかかえ、静かに立ち去っていく。その後をお付きの黄内官が追った。王が義禁府に乗り込んでくるに当たって伴ったのは、ただ一人、この老齢の内官だけであった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ