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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第11章 第二話 【桔梗の涙】 しばらくの別離  

 王妃は形の良い瞳を見開き、首を振った。
「あれは冤罪であったという証拠が出たと聞きました。同じ後宮に住まう者同士。しかも、殿下と私がいかに形ばかりの夫婦とはいえ、私と淑媛は仮にも殿下という一人の良人に共に仕える身です。広いようでも狭い宮殿のことですから、無用な諍いや憎しみは避けるべきかと存じます」
「愕いたな、中殿。そなたがそのように拓けた心の持ち主とは知らなかった」
 ユンが心底から言うと、王妃は咲き誇る牡丹のような面にやわらかな微笑を浮かべた。容貌も性格も若き日の大妃を彷彿とはさせるが、王妃にはまだしも大妃にはない情理を備えた面がある。

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