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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第11章 第二話 【桔梗の涙】 しばらくの別離  

 ユンは暗い表情で首を振る。
「このようなときに、呑気に眠ってなどおられぬ」
 黄内官はハッと胸をつかれた様子だ。
「しかしながら、殿下は大切なお身体、代わりのきかない御身におわします」
 黄内官の心からの進言に、ユンはひっそりと笑った。
「いっそのこと、気を失ってしまえば、何もかも忘れられるかもしれないな」
「殿下!」
 気遣わしげな中にもかすかな非難のこもった声音に、ユンはまた笑う。
「大丈夫だ。己れの果たすべき責務を忘れるほど愚かではない」

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