身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】
第2章 第一話 【桜草】 戸惑いと、ときめきと
女とマルが家の表まで出てくる。二人に見送られ、明姫と男は貧民街を後にした。四つ辻で振り返ると、マルがしきりに手を振っている。男も明姫も大きく手を振り返し、マルの美しい母親は丁寧に頭を下げた。
辻を曲がったところで、母子の姿は見えなくなったというのに、明姫はまだ背中にあの美しい女の視線が突き刺さっているように思えた。
あの女はこの男を好きなのだ。それはやはり、色事には疎く奥手とはいえ女の勘であったろうか。いや、同じ男を恋い慕う女同士だからこそ、相通じるものがあるのかもしれない。
辻を曲がったところで、母子の姿は見えなくなったというのに、明姫はまだ背中にあの美しい女の視線が突き刺さっているように思えた。
あの女はこの男を好きなのだ。それはやはり、色事には疎く奥手とはいえ女の勘であったろうか。いや、同じ男を恋い慕う女同士だからこそ、相通じるものがあるのかもしれない。