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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第11章 第二話 【桔梗の涙】 しばらくの別離  

 殿下、明姫はどこにおりましても、遠くから殿下のお幸せを祈っております。
 煌々と輝く月に向かって、呼びかける。あの月にユンがいるはずもないが、もしかしたら、今、この同じ空を彼も見ているかもしれなかった。今、自分が見上げている空は遠く都まで続いている。
 そう思うことで、孤独に挫けそうになる弱い心を支えられる。
 手を伸ばせば触れそうなほど近くにある月を明姫は飽きもせずに眺め続ける。
 清かな月明かりが池の面を照らし、時々、立つ小さな波が金銀に染まっている。
 彼女がたった一人の男に向けて想いを綴った灯籠は、明姫の想いを乗せて池の面をゆらゆらといつまでも漂っていた。


(第二話【桔梗の涙】おわり)

 明日から第三話へ!

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