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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第12章 第三話 【観玉寺の廃妃】  再会

 こうして都から遠く離れた山寺で一心に祈りを捧げる彼女を見るのは、何か明姫でありながら明姫ではない―まったくの別人を見ているかのような不思議な気持ちだった。
 水晶の数珠を手に掛け、何をそんなに賢明に祈ることがあるのだろうか。判らない、明姫の考えていること、気持ちが何一つ判らなかった。そして、それが酷くもどかしい。
 かつては誰よりも身近にいて心の通じ合った恋人であり妻である女。その女が今はとても遠く感じられる。
 先刻の明姫の言葉がふいに耳奥で甦った。
―私はもう、国王殿下の側室でもお妃でもありません。
 確かに明姫はそう言った。あれは、聞き違えようのない事実だ。もしかしたら、明姫にとって、自分はもうとっくに過去の男になってしまったのかもしれない。

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