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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第13章 第三話 【観玉寺の廃妃】  涙の味

 二年前はユンのためにと自ら身を退いたも同然であったけれど、今度は彼を手放したくない。いっそのこと、ユンが名もないただの男であれば、この人里離れた山寺に身を隠し二人だけで暮らすこともできるかもしれない。
 ユンは国王なのだ。国王の住まいは都の宮殿と決まっている。罪人の明姫が再び宮殿に戻れるはずもなく、また戻りたいとも思わない。悪意と陰謀の渦巻く宮殿は伏魔殿だ。今更、帰りたいと思うはずもなかった。だから、こうして、ここでユンがまた訪ねてきてくれるのを待ちわびているしかない。

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