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身代わりの王妃~おさな妻~続・後宮悲歌【후궁 비가】

第13章 第三話 【観玉寺の廃妃】  涙の味

 国王であるあの男が自分のために再び都からここまで来てくれるだなんて、身の程知らずで馬鹿げた夢を。
 甘い一夜の記憶は、すぐに明姫を果てのない絶望へと突き落とす。明姫は滲んできた涙をまたたきで散らし、再び大根の入った籠を持ち上げた。
「大丈夫ですか?」
 ふいに背後から気遣わしげな声が聞こえてきたかと思うと、籠が取り上げられた。
「慈鎮さま」
 明姫が眼を見開く。
「これはかなり重いな。よく川まで運べましたね」
 慈鎮がいつものように穏やかな笑みを浮かべている。彼の手にはちゃんと籠がおさまっていた。

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