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わすれない

第2章 それぞれの傷

やっと笑い終わった圭介が話しかけてきた。




「ところで、お前、俺の名前を覚えてたんだな。」


いきなりそう言われて、なんでそれ?とあきれた。



「普通さ、“家はどこだ”とか “親はなにしてる”とかきくもんじゃない? 保護者の連絡先とかさ…。」


普通は聞くもんよ。と顔を見ながら言う私。




「んー。つか、お前家には帰りたくね~んだろ?
聞いてもこたえね~だろうし。
だいたい、美咲ってのも本当の名前じゃないだろ?」





圭介は得意のスマイルで話す。



「…。どうして あたしを助けてくれたの…?」



「どうしてって…。ん~ 気になった から? つか、助けんのに理由いらんだろ。」


――理由はいらない。か…。世の中、こんなに優しい人もいるんだな…。


そう思った時だった。


コンコンッ



病室のドアがノックされ、誰も返事をしないうちに開けられた。


「えっーと…。どちら様で…?」


圭介が立ち上がりながらドアに向かって聞いている。
私からは圭介が邪魔で入ってきた人物は誰だかわからない。



なにも言わずにいるその人物を見るために体を起こした。

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