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わすれない

第2章 それぞれの傷

カーテンを開けて、またきますね。 と声をかけて部屋を出ていった看護師さん。

部屋には私と男が、圭介だけが残された。


「だっ「あの…」



二人同時だった。

一瞬だけ目があったけど私はそらした。


「なに? なんかほしいのあるか?」


圭介はまた椅子にすわって私の手を握ってきた。


私は圭介の手を離せなかった。すごく恥ずかしいのに、ドキドキしてるのに、手をどけようとは思わなかった。



「…どした?なんでも言えよ?」


圭介は私の顔をのぞきこんだ。


「‥‥りがと。」


聞こえるか聞こえないか…わからないほどの小さな声で言った。


「はいぃ~? きこえね~よ(笑) 年取ったおっさんにはき こ え ま せぇ~ん!」


ーーぜったい。ぜぇ~ったい聞こえてるし!!


圭介はクスクス笑いながらわざとらしくいう。
私は素直にお礼を言いたかったのに、ムカついた。

「おっさん、ちょうどいいから検査してもらえば? あ た ま の!!!!」


圭介の方にむかっておもいっきしあっかんべーをしてやった。

圭介は大笑いし腹を抱えていた。

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