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わすれない

第2章 それぞれの傷

───あたしはあいつから逃げられない。



圭介が、戻ってきたのもわからずに、弦の声が頭のなかをぐるぐると回っている。

体は震えて知らず知らずに涙が出ていた。


「──さき、美咲! 大丈夫か?!」



近くでそう大声をだされ肩を掴まれた。




「ひっ、、、いゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



掴んだのが圭介だと気づいてなかった。ただ、あのときの……あの時の記憶がよみがえってしまった。




「お、おいっ! おれだよ、圭介だ!美咲?俺がわからないのか?!」




掴んだ肩を離してくれた圭介は何が起きたのかわからないようすで、ナースコールを押していた。
私が叫んだからか、近くにいた看護師さんが「どうしました?!」と、駆けつけてきた。





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