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クリスマスに奇跡を

第3章 Happy New Year

クリスマスのあの日、悟は俺のしたことを全て知った上で会ってくれたらしい。
そして、悟はみっともなく泣いた俺を優しく抱きしめてくれた。
それでも、俺は許されることはないと内心怯えていた。


それが今、俺の腕の中にはすやすやと寝息を立てる悟の姿がある。
あぁ、どれだけ望んだことだろうか。
どれだけ夢みたことだろうか。
悟がすべてを許し、俺のそばにいることを選んでくれなければあり得なかったことだ。


「・・・ありがとう、悟」
「・・・んっ」
俺の言葉に返事を返すように漏れた息に、自然と口元が緩み笑みがこぼれる。
本当にこんな穏やかな気持ちで起床したのは何年ぶりだろうか。




+++++++++++++++++++


ブーブーとバックポケットの中で携帯のバイブが鳴る。
俺は携帯を取り出すと画面には"悟"の文字。
ドキンッと心臓が高鳴る。
クリスマス以来一週間、連絡は取っていない。


「も・・・もしもし」
「・・・伸」
どうしても臆病になってしまう。
以前のようにスムーズに言葉が出ない。
ぎくしゃくした感じがする。
それも、仕方がない事だ。
俺は、許されなくて当然の事をしようとしたのだから。


罵られる覚悟はできている。
嫌われる覚悟はできている。
それでも、正直な所、怖くて怖くて・・・携帯を持つ手が震え、汗ばんでくる。
「あぁ・・・。」


俺は、精一杯の冷静を装って返事を返したつもりだったが少し上擦った震える声にしかならなかった。
だが、悟は少しも気にせずに弱々しいまでの小声で話を切り出した。
「あの・・・あのね、伸。今晩、一緒に年越し・・・したい。・・・ダメ?・・・かなぁ」









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