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Sky Blue

第7章 解放区

きっと本来なら、言葉を交わすどころか姿を見ることも難しいだろう。

それ程遠い存在なのだ“九条 泉”は………


「どうして二人が一緒にいるんだ?それに制服少し濡れてないか?」


「え…これは」
「足を滑らせて海に落ちてしまったんです」


永斗を遮るように泉は今此処に至るまでの理由を話した。

永斗が足を捻ってしまい此処から動くことができなかったこと、連絡を取りたくても海に落ちた時携帯が濡れてしまって機能しなかったこと。全て嘘だが教師は何の疑いもなく信じているようだ。

「済みませんでした。僕は携帯を持っていないので…近くに公衆電話も店もありませんでしたし…」

「そうだったのか…」
「ご心配をお掛けしました。」

もう一度深く頭を下げる。
「いや、こちらこそ迷惑掛けて悪かったね…九条くんの先生方は知ってみえるのかな?」


「いえ…でも大丈夫です…」



永斗の目の前で事が丸く収まっていく。



“違う”だろ……?


「イズ…」

口をついて出た声は何とも頼りなさ気で、微かに震えている。



今、泉は望んで此処にいるんじゃなかったのかよ?


そんな嘘聞きたくなどなかった。


“今”を放棄して二人で過ごした時間は何だったのだろう……

同じ罪を犯して共犯者になれたような気がしてたのはオレだけだったのか?


一人で浮かれていたのだと気付かされたような瞬間でもあった。



開放してやるなんて言ったオレをどう見ていた?

泉は始めからそうするつもりだったのだろうか――――

今永斗の目の前にいる泉は間違いなく永斗の知らない泉だった。


―――――優等生の顔をした“九条 泉”。



心が僅かに痛む。



オレは本気だった……本気でイズミを開放してやりたかった……



だが、泉の眸にはどう映っていたのだろう……


結局オレはイズミの何も知らない…本名さえ知らなかった――――

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