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運命に導かれて

第5章 愛の行方

「ディアナは、実は捨て子だったのだ。」


ディアナは両手で口をおさえて、驚きの声を止めた。


「ディアナ。落ち着いて聞くのだよ………」

王は父親のように優しく言った。


「国境には、小さな川が流れている。水草にからまってその川に沈んでいる子供を、ある女が見つけ、慌てて保護したのだ。それが、身分の低いディアナの母親だった。色々と調べたが、子供の素性は全くわからず、うちで面倒をみることに決めた。この夫婦には子供がいなかったが、母親はとても子供がほしかったので、自分の子供のように大切に育てた。しかし父親は、子供が嫌いだった。働かずに、貧しいくせに金を借りて遊び歩くような男だった。ある時、多額の借金を残して姿を消した。この男に苦労させられすっかり弱っていた母親は病弱だった。しまいには働けなくなり、ディアナは借金取りに身を売られた………」


ディアナは涙を流していた。

そうだったのか………知らなかった。
亡くなる時に母親が何か言おうとしていたのをディアナは思い出した。

あなたは本当はわたしの娘ではなかった、そう言おうとしていたのだ。

今になって、それがわかった。

そんな思いまでして育ててくれたなんて………わかっていたなら、もっと恩返しをしたかったのに、何もできなかった…………


オルフェウスは席を立ち、ディアナの後ろにまわり、優しく肩をだいた。

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