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赤い花~情欲の檻の中で~

第5章 終章~再びの砂漠にて~

「時々、いるんだよな。失恋したとかでセンチメンタルになって、ここに来る若い女とか、さ」
 青年は肩を軽く竦め、私を見た。その棗型の漆黒の瞳には〝何もかもお見通しだぞ〟と書いてある。
「生命、大事にしろよな。国には家族もいるんだろう? 男の一人や二人がどうしたっていうんだ。生きてりゃ、また良いこともある。ほら、俺のように良い男にも出逢えただろ」
 少し緊張が解けたのか、〝僕〟が〝俺〟になっている。真顔で言うのがおかしくて、私は思わず吹き出した。

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