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赤い花~情欲の檻の中で~

第5章 終章~再びの砂漠にて~

 私はもう一度、眼を閉じる。
「なっ、もう気が済んだだろう。俺と一緒に村まで帰ろう。君の泊まっているホテルまで送ってってやるから」
 眼を開けて振り向くと、やはり先刻の男が私を待っている。私はうっすらと微笑み、その男の差しのべた手の方へと歩いていった。
 後にはただ、沈黙の砂漠が横たわるのみ―。
 彼はけして砂漠には入ってこない。私は自分の意思で死の砂漠から生の大地へと再び脚を踏み入れたのだ。私は少し躊躇った後、現地の人懐こい青年の差し出された手を握った。

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