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赤い花~情欲の檻の中で~

第2章 MemoriesI

 祥吾の眉がまた心もち跳ね上がる。
「何だか、引っかかるな、その言い方。俺は別に安浦部長を決めつけた憶えはないけど」
 そこに、店のマスターが現れた。
「いらっしゃい。何にしますか?」
 六十そこそこの銀髪のマスターは、いつも黒のシャツにグレーのズボンを身につけている。若かりし頃はかなりのイケメンであったろう面影が今も十分に残っている。
「俺はマンデリン」
「私はキリマンジャロを」
 二人が口々に言うと、マスターは銀の丸盆から二つの水の入ったグラスを置き、にっこりと笑って去っていった。

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