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赤い花~情欲の檻の中で~

第2章 MemoriesI

 そのせいばかりというわけでもないだろうが、祥吾は酒も煙草も量が増えて強くなった。しかし、この店は原則、煙草は吸えない。煙草の味や香りはコーヒー本来の深みのあるうま味を麻痺させるとして、マスターが禁煙ということにしているのだ。
 ここのマスターも穏やかそうで人当たりも良いが、なかなか自らの信念に関しては一徹というか頑固である。
 美華子も特に話すこともないので、黙って視線は自然とテーブルの上の祥吾の手の動きに向いていた。

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