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赤い花~情欲の檻の中で~

第2章 MemoriesI

 しかし、それからというもの、彼がコーヒーの飲み方について美華子に文句を言うことはなくなった。
 美華子はすっかり口数の少なくなった祥吾には頓着せずに、いつものようにゆっくりとコーヒーを味わった。〝ドルフィン〟のマスターは本人いわく独身だという。 
―家内も病気でもう二十年も前に亡くなりましてね。一人娘は生まれつき重度の障害があって、二十歳にもならない中に先立ちました。
 だから、マスターに言わせれば、好きなように生きられるということらしい。

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