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赤い花~情欲の檻の中で~

第2章 MemoriesI

 美華子はこの店の雰囲気が好きだ。今、外では現実に雨が降っているが、例えていうなら、この店には雨の匂いがする。もしくは、骨董品店独特のゆかしいような、懐かしいような匂いとでもいうのか。嗅ぐと少し胸の奥が切なくなるけれど、同時に懐かしさとか安心とかを感じられるような。
 この店に来てマスターの淹れたコーヒーを飲むと、ざわめいていた心が落ち着くような気がする。
 今日もいつものように、ひと口ずつコクのある香りと味を堪能していたのだが、静かな時間は突如として中断された。

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