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それでも、私は生きてきた

第73章 残された記憶

目が覚めた瞬間、寝ぼけたような感覚。

視界だけはハッキリと見える。

意識は朦朧としていながらも、

視界に広がる眩しい天井。左右に看護婦さんが立っている光景。点滴。

ハッキリと見える。


聴力もハッキリ聞こえている。


カチャカチャと、意識を失う前に聞こえていた金属音が更に激しくカチャカチャ…。


目がパタパタと無意識に瞬きをする。

ゴム手袋越しの看護婦さんの指先が目元に触れた時、




先生!意識が戻ってます!目が瞬きしてます!

え?3分しか経ってない。目だけ動いてるか?

瞬きしてます。口元は動いてません。

麻酔を変えて。

わかりました!




体は動かせられない。喋れない。

だけど、

目だけは動く。

耳も聞こえている。

痛みはないけど、

腕を圧迫する血圧計の感覚や、点滴の冷たく痺れる感覚がある。


そして。

身体の中に、何かが入っている感覚も…。



別な看護婦さんが慌てたようにパタパタと足元を鳴らしながら入って来るのが聞こえる。


麻酔○#*持ってきました!


すぐ交換を!


強い麻酔に変わるのか…と、呆然としながらも頭の中は、ハッキリと作動していた。








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