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それでも、私は生きてきた

第73章 残された記憶

数時間、別室で横たわりながら
呆然としていた。

吐き気は治らず、何度も枕元の洗面器に顔を埋めて嗚咽を繰り返す。

下腹部の激しい痛みにもがきながら唸るしかなかった。

涙も枯れたのか、
泣くことも許されず

鮮明に残された記憶。



コンコン…

カチャ…

入って来たのは、先生と先程の看護婦さんだった。


手術…大変だったね。

はい…。

吐き気と痛みは、まだ…あるよね?

はい…。

もう10週だったんでね…あなたの子宮がね、赤ちゃんのサイズに合わせて広がりきれてなかったんですよ…。無理に引っ張られてるような状態。それが急激に元の形に戻ろうとする反動の痛みが強いのでしょう…。

………。


何も返答が出来ず、横たわりながら頷くしかなかった。



麻酔ね…効きづらいって言われた事あります?


麻酔は…。歯医者くらいしか無いですけど…言われた事もあったと思います…。



そうですか…。部分麻酔ならともかく…全身麻酔がね、私も初めてでね…ここまで麻酔効かないのは。


すみません…。


思わず「すみません」が言葉に出た。


自分の中では答えは出ていた。

処方依存の結果だと、
私の中では結び付いていた。


安定剤、睡眠薬だけでは飽き足らず、

若い頃からの偏頭痛を理由に
手元には常に鎮痛剤が大量にあった。


この体は、

依存症そのものの結果だと。


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