テキストサイズ

妹えっち!

第5章 離れる兄妹







「いやっ!」
 叩いて突き飛ばした



 はぁっはぁっ…
 璃乃はベッドから逃げ出した
 吹きかけられた息が当たった首をパジャマで隠す



 怖かった
 知らない男の人がいた



「これで懲りたろ
枕、持って帰れよ」



 投げ渡された枕を手に
 璃乃は無言で自分の部屋に戻った









 バタンと大きな音を聞いて
 峰斗は深く息をついた



「バカか…俺は」



 なにやってんだか…と呟く

 それでも確かな亀裂が入った事に安心していた、確実に嫌われた事が今はありがたかった



 暗闇でもわかる
 裏切られたような顔

 深く深く傷ついた顔
 自分がそうさせた事は心苦しいがこれでよかったのだと思った



 そう、これでいい
 自分に言い聞かせる



 璃乃は病気だった
 見てればよくわかる

 璃乃の世界の中では
 兄である峰斗は神みたいな存在であり崇めている

 悪い言い方をすれば
 依存している



 いい頃合いだと思った
 来年は璃乃も中学生になる

 璃乃が自分の世界を広げるために
 峰斗は邪魔な存在だった



 成長の妨げになるなら、優しくて頼れる兄なんてなんの価値もない









 峰斗は目を閉じた
 月が隠れた暗闇の中でかすかにすすり泣く声が聞こえる

 流れる雲は折り重なり
 雲の切れ間を作らず、一向に月の光は届かない

 胸を抉り、耳を抉る
 閉じても聞こえる涙の音

 すすり泣きは
 いつまでも聞こえた



.

ストーリーメニュー

TOPTOPへ