妹えっち!
第1章 仲のいい兄妹
峰斗は職員室に呼ばれた
「璃乃…」
「へへへ、かわいくないね」
朝、二つに結んでいた片側の髪がバッサリなくなっていた
下を向く璃乃と手を繋いで下校すると近くの公園のベンチに座る
「わざとじゃないんだって
髪…ハサミで切られちゃった…
璃乃…かわいくない…」
本当にわざとじゃないのか?
それを問い詰める事が根本的な解決に繋がるわけじゃない
怒りをどこにぶつければいいかわからなかった
心配かけないよう
力なく笑う璃乃を見て
胸が張り裂けそうになる
「璃乃、おいで」
「せっかくお兄ちゃんが
結んでくれたのに…」
力のない笑みはすぐ崩れて
璃乃は峰斗の胸で泣いた
わんわん泣いた
悲しくないわけがなかった
「大丈夫、璃乃はかわいいよ
世界で一番かわいい
髪はまた伸びてくるから…」
髪は元通りになる
だが、璃乃が負った精神的な暴力の傷は元通りになりようがない
「うわぁぁぁぁん…!」
踏みにじられた自尊心は簡単には回復しないのである
些細な事で一度下に立つと、もう上を見上げられなくなる
峰斗は無力だった
なんの解決策も見つからない
今は守ってやれる
けれど、璃乃とは二歳違う
峰斗が中学に上がる頃
璃乃は小学5年で
璃乃はひとりでなってしまう
ひとりで戦わねばならない
このままでは璃乃はイジメという暴力に押し潰されてしまう
ずっと守ってなどやれない
璃乃が変わらなければならない
「璃乃…泣くな
下を向いちゃだめだ
顔を上げろ
顔を上げたら…俺がいるから」
「ひっく…えぅ?」