妹えっち!
第1章 仲のいい兄妹
涙を溜めた目で
璃乃は兄を見上げた
「璃乃、武道をやろう」
「えっ…?」
「お前に足りないのは心だ
武道をやって精神を鍛えよう」
璃乃は兄が何を言っているのかわからなくて見上げた
兄の真剣な顔がある
ただまっすぐ
自分を事を見てくれてる
それだけはわかった
下を向かず、上を見上げれば
お兄ちゃんがいてくれる
璃乃の中に強いイメージが焼きつく
「強くなるんだ
イジメられる事に慣れるな」
「強…く…?」
「仕返しするためじゃない
お前は優しいよ
でもそれじゃ自分を守れない
強い心を持て
嫌と言える勇気を持て
誰にも負けるな
変わろう
がんばろう
お兄ちゃんがいなくても
イジメなんかに負けるな
泣いてもいい
負けるな」
璃乃は幼かった
それでも自分より泣きそうな人の顔くらいわかる
自分の涙よりずっと熱い
璃乃の大好きなお兄ちゃんが心配して泣いてる…
「うん…璃乃強くなる
お兄ちゃんを泣かせたくない
怖いけど、やってみる」
教室に入るのが怖い
頼れる人がいない
ひとりで孤立している
助けてくれない
自分の教科書が破けていた時
心まで破かれたようだった
「璃乃、負けないよ
お兄ちゃんがいるもん
なんでもできるよ
武道やって強い心持てたら
勇気を出してやめてって言うよ」
璃乃は峰斗に抱きしめられる事が大好きだった
その中では自分は
一番自分らしくなれるから
気持ちに素直になれる
弱い自分も好きになれる
お兄ちゃんの腕の中が好き
心地よくて安らぐ
あれだけ悲しかった気持ちも今は友達のような気分だった
「強く…なれるかな?
璃乃、話す事も苦手で
いつも下を向いちゃうのに…
嫌って言えるようになれるかな…」
「なれるさ
弱い事は恥じゃない
お兄ちゃんだって弱いんだ」
暗くなり始めたから帰る
暖かい兄の手を離さないようぎゅっと握りしめる
「え!?お兄ちゃんは強いよ!」
「はは、泣いちまったからな
男は簡単に泣いちゃいけないのにな」
「じゃあお兄ちゃんも強くなろ!
一緒に武道やろーよ!
見なかった事にしてあげるから
ね、そうしよ!」
並んで歩く二人の影が
夕日に照らされて伸びていた
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