
私
第12章 午後6時30分
「どうして……?」
「民江さん、
そんなに驚くこと無いじゃない。
私はただ単に主人の好みに合わせただけよ。
でもこれが本当の私になのよ。」
満面の笑みで言う百合子が恐ろしく感じた。
しかも旦那様のことを"お父様"ではなく、"主人"……?!
百合子に気を取られながらも受話器を握りしめては、演技をし始める。
「まぁ、旦那様
この嵐のなか……」
「えっ?
どうしましょう……百合子様が寂しがりますわ。」
無理やりだけど、応対の無い電話を会話があるかのように演技を続ける。
百合子はじっとこちらを見ている。
