
私
第3章 一年前
民江はクスリと微笑みながら、ゆっくりと髪の先端をまとめるように解かす。
「私は長崎県外の*西彼杵に居ましたから、被爆には合いませんでしたが、危ないということで。」
「こちらにいらっしゃったのね。」
「はい。」
「お父様とは?」
「…当時、銅線所のお手伝いをしてまして…簡単な経理ですけどね。」
一瞬、民江の手が止まったような気がした。
「それでお父様とお知り合いなのね。」
「はい。」
綺麗に髪がまとまった。
用が済んだので、民江は"おやすみなさい"と言っては直ぐに部屋を出て行った。
*西彼杵(にしそのぎ)正式名は西彼杵群 長崎の外れにある村 入りくんだ窪地にある。今現在は西海町との合併で"さいかい市"となっている。
海上警備隊の施設とハウステンボスがある。
