ボカロで小説
第1章 からくりピエロ
気付けば太陽は、真上に来ていた。まだ初夏とはいえ、長袖のシャツは暑い。お台場の時計台の下で、空を仰ぐ。
携帯を開いて時間を確認すると、待ち合わせの時間をすでに二時間も過ぎていた。僕はため息をつく。
また、君は来ない。
約束をすっぽかされるのは、何も今回が初めてじゃない。時間にルーズなのもいつものことだ。
それは重々承知しているつもりだが、いざこうやって一人ぼっちで待ちぼうけさせられてると、悲しくもなる。
さっきから彼女の携帯に何度も電話をかけているのに、電源が入っていないのか繋がらないのだ。充電するのを忘れて繋がらないのもよくあることだから、たいして怒りも湧いてこなかった。
僕との約束を、どうせ彼女は忘れてしまっているのだろう。もしくは面倒になってすっぽかされたのだろうか。あとで謝りのメールが来たら、まだマシな方。どちらにしろここで待っていても来ないのだから、さっさと帰るか一人で出かけた方がいい。
だけど僕は、二時間経った今でもここを動けずにいる。認めてしまえば楽なのに、まだ彼女を待っている。