ボカロで小説
第1章 からくりピエロ
雲はさっきからとてもゆったり流れていて、時間の流れが遅く遅く感じる。僕は目を閉じて、何度目かのため息をついた。
頭の中で、小さい頃彼女に言われた言葉が反響した。
『ユウトは、なんだかピエロさんみたいだね。いつも優しくて、あたしのお願いなんでも聞いてくれるの』
見慣れた屈託の無い笑みで差し出してきたのはお面だった。口元がつり上がった、目の細いピエロのお面。笑っているはずなのに、角度によっては泣いているようにも見える。
きっと似合うと彼女が楽しそうに笑うから、特に意味もなく僕はそのお面を装着した。
――あの頃から彼女にとっての僕は、ずっと『ピエロさん』のままだ。
立って待つのも疲れてしまって、僕は時計台に背を預け、ずるずるとしゃがみこんだ。
日曜だから、人が多い。手を繋いで談笑するカップルや、犬を連れた老人、小さい子の手を引く親子連れ。みんなが僕をあざ笑っているみたいで、酷くみじめだった。
どうしてこんないい日に、僕は一人でここにいるんだろう。
『ねえ、一緒に遊ぼう』