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寝取られ漂流記

第20章 20歳夏

「貴女を見た時思ったわ。勝てないって。この子に彰人が夢中になるの分かるって。あたしも男だったら惚れちゃいそうなんだもの」
「そんなに褒めても彰人はあげませんよ?」
「そんなつもりはないわ。今のが私の本心なの」


そんな言い方をされてしまったら、
これ以上は何も言えない。


「彰人があんな逞しくなる理由も分かったしね。あたしはそれで十分」


諦めたような表情には悲しさも含まれている。
そんな表情にあたしは色々聞いてみたくなった。


「彰人の昔からの知り合いなんですよね?」
「ええ。彼のお母さんが前の仕事先の先輩でね」
「彰人ってどんな子だったんです?」
「そうねぇ。どちらかと言えば引っ込みがちで、自分からどうこうって子じゃなかったわ」


あたしと出会った頃の彰人もそんな感じだったっけ。
それでもあたしに声を掛けてきたんだから少しは成長していたのかも知れない。


「それが、去年の春先に帰って来た時には別人のようだったわ。自信無さげな雰囲気がなくなってた」
「それで身体を許したんですか?」
「……そうかも知れないわね」


絵里さんはその時の事を思い出すように天井を見上げる。


その後も彰人の昔の話を色々と聞いた。
絵里さんは職業柄なのか話し方が上手で、
その節々に彰人への思いを感じた。

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