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寝取られ漂流記

第21章 20歳秋

「お、やっとご連絡だ」


男はそう言うとポケットから携帯を取り出す。
画面を見ながら、何度かボタンを押すと、
何も言わずに携帯をしまった。


「やっぱりな。今日の予定なくなっちまった」


撮影がキャンセルになったって事だろうか。
でも、よくよく考えたらこの人、これから撮影だったのにお酒飲んでたんだよね?


「撮影なくなったんですか?」
「そ。でもまぁ俺が必要なくなったってだけだけどね」
「?」


男の言葉の意味が分からずにあたしは首を横に傾げる。


「これ、ほんとは言っちゃいけないんだけど。君俺の話聞いてくれるから特別に教えてあげるよ」


男はそう言って、あたしに耳を貸せと手招きする。
あたしは興味に負けて、男に耳を貸した。


「今日の撮影さ。本当はミキが素人相手にするって企画なのよ。でもミキって少し気難しい所があってさ。仕事って自覚がないのか相手を選ぶんだよ。もしミキのお眼鏡に叶う相手がいなければアウトってわけ。だからそんときの為に俺が呼ばれたんよ」
「素人のフリするって事ですか?」
「ま、そういう事になるわな」


つまりヤラセって事だ。
テレビとかなら許されない事かもだけど、
AVならそれが許されるって事だろう。
でも、この人がいらなくなったって事は、
お眼鏡に叶う男がいたって事だろう。


「だから今日は仕事なし。ま、分かってたから酒飲んでたんだけどね?」
「どうして分かったんですか?」
「ミキってこういうステージよくやるんだけどさ。アイツ気に入った男がいるとパフォーマンスが派手になるんだよ。もうそのステージは気に入った男に魅せつける為だけにやるんだ」
「うわぁ」


そんな人、ほんとにいるんだぁ。


「今日はノッケから派手だったからな。俺はいらなくなるの分かったからさっさとお暇頂いたってわけよ」
「なるほど」


ステージはほとんど見てないけど、そうだったんだ。
それが成立するのも全部そのミキって人の実力があるからだろうなぁ。

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