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寝取られ漂流記

第22章 20歳冬

「茜」


唇の僅かな隙間から洩れる晃佑の声。
その声は確かにあたしの名前を呼んでいた。


それでもあたしはそれを無視した。
無視して晃佑の背中に腕を回して、さらに強くキスした。
抱き寄せるような形で晃佑とベッドに倒れ込む。


今は、
今だけは、
何も考えずにこうしていたい。


それでもあたしのその思いを遮るように晃佑の方から離れた。
晃佑はあたしに覆いかぶさるようにしてあたしの顔を見下ろしていた。


晃佑の吐息が聞こえる。
そしてあたしの吐息も。
今まで何度だってこんな姿勢で男と向き合ってきた。
それでもその時とは全然違う。


「これだけ言わせて?」
「何?」


捻りだしたような晃佑の声にあたしは小さく答える。
まっすぐ晃佑の視線が注がれる。
裸を見られるより恥ずかしいのはやっぱり晃佑が特別だから。


あたしは待つ。
晃佑からの言葉を。


「俺の隣にいてくれ」


晃佑の告白に、












あたしは再び唇を奪って答えた。

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