テキストサイズ

Pour mon cher -涙の先に-

第68章 君のバースデー

瞬間――。



愛の香りが俺を包み込むようにふわっと香る。




愛は俺を抱き締め返すわけでもなく、抱き締められたまま籠った声で話を続ける。




「何度も、忘れようと思った。

何度も忘れなきゃって思った。

あんな優しい先輩を裏切るような事、しちゃいけないって思った。



だけど‥・・っ



やっぱり‥私、嫌なんです‥」




「‥‥愛?」





胸に埋めてた顔をパッと上げた彼女の大きな瞳には涙が今にも溢れそうなほど溜まって潤む。




一瞬、言う事を躊躇したような感じだったが意を決したように言葉を吐き出す。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ