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S×強気で恋になる

第30章 沈黙

無数の子供たちが校庭のようなところで遊んでいる。
みんな親いないのか・・・


純平もここで育ったのかな・・・


建物の前の芝生の陽だまりで小さい男の子と一緒に犬を撫でてる男を見つける


あ・・・純平いた・・・


楽しそうに・・・笑ってる・・・
あいつ、あんなに笑うんだ・・・

あんなに笑ってるとこ初めて見た・・・


俺、ここ入れねーな・・・
純平のことも
純平の最後の砦のこの施設も



壊しそうー・・・



「あの、なにか御用ですか?」
突然白髪交じりの男性に声をかけられる。
「いえ。あいつの知り合いでして。」
「あぁ、純の。そうでしたか。彼はいつも元気でしたか?」
元気だったのか?
そんな風に見たことなかったな・・・。
「さぁ、、、元気でしたよ。少なくとも俺の前では泣いてることのが多かったかもしれないですが。」

純平が芝生から立ち上がり犬と男の子と一緒に施設の中へ入っていく。

「・・・。あまり彼を苦しめないで下さいね。」
突然悟ったように真顔で言われる。
「その真意はなんですか?」

「昨日は何も喋らなかった。けれど、長年見てきて彼が何を考えているか、ということは検討がつきます。そして、あなたの存在も。」
「・・・。彼と一緒に住んでます。」

沈黙が続く。

「彼はね、部屋に置き去りにされて捨てられた子でした。その後も養子先を相次いでなくしてます。そんな幼少期のせいで、置いていかれることも、捨てられることも傷として残ってます。引き取られた家庭でも、愛してる。生まれてきてくれてありがとう。そう里親から言われない不安ってわかりますか?」

「想像を絶するかもしれません。養子先が変わったことは聞きました。」

「今も昔も変わらない。自分は誰からも愛されていない。」

「え?」

「昨日彼が言った言葉です。一緒に住んでるなら迎えに来て下さい。でも、約束して下さい。彼も大人です。が、心は成長しきってません。彼の家になってあげてください。」

そう言ったあと、そのおじさんは施設に入っていった。

俺は車の前で立ち尽くした。


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