乾いた空
第4章 四章
寒いので服が乾いているか確かめると、まだ半乾きで今着ると気持ち悪く、折角温まった身体がまた冷えるに違いない。
毛布にくるまって身体を小さくしていると彼が帰って来た。
「逃げないの?」
変な質問が帰ってきた。
こんな山の頂上では逃げようが無いのに、まるで正体を知ったのを解っているかのようだった。
いつまでも会話が無いのも嫌だし、確かめたい気持ちもあり、よくキャンプをしているのかと聞いたら、何だか適当な答えが帰ってきた。
適当に言うしか無いのだろう。
彼は極力私に関わり合いたくないのは知っている。
服が乾いたら家の近くまで送ってくれると言ってくれたが、私にはもう"帰る家"と呼べる家なんて無かったし、帰ると言うより、ここで身を投げる事にしていた。
なのに……
なのに……
何も名前や事情をあえて聞かない彼が何故だか温かくかんじた。