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乾いた空

第5章 五章ー1





どんな人生であれ、最後の最後にはこんな所にいてほしくなかった。

一瞬だけでも、私の大切な人でもあり、ユウキにとっても、大切な父親だった。


「お父さん……
お父さん……」



最後まで名前の解らない彼をユウキの代わりに"お父さん"と呼ぶしかなかった。

まるで彼の名前が"お父さん"と言うように。


私は彼を大切と思っている筈なのに、名前すら知らない。


彼は私をユウキだと思い込んで愛情を注いでくれたのに……


案内人に背中を押されては寒く、暗い部屋を後にした。




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