
月夜の下で…
第3章 ~ 愛しい人 ~
「みちるーーっ
帰ろう!」
二年A組の教室…
帰る用意をしていたみちるの元へ、楼が笑顔で駆け寄ってきた。
「ちょっと待って
…今‥教科書を――」
「今日‥あいつと会った ?」
「えっ…どうして?」
「…あいつの臭いがする から」
「なにそれ
変な楼…帰ろう?」
楼…ごめんね‥‥
ごめん‥‥
はぐらかすようにそう言うと、鞄を片手に席を立った。
「今日はどこ行くーー? 」
「ご‥ごめん
…ちょっと体調よくな いか
今日は帰るね‥‥」
「大丈夫かっ!?
病院に行ったほうが… 」
「そこまでじゃないから 」
「…なら‥いーけど‥‥ 」
心配そうに見つめてくる楼に、みちるは押し潰されそうな罪悪感で胸の奥がズキっと痛んだ。
「みちる」
反対の廊下から歩いて来る森崎先輩の姿に、後ろめたさでビクッと体が跳ね、言葉を失い固まってしまった。
「みちる?」
「すごく疲れてるみたい だね
無理もないか
ずっと‥俺に責め続け られてたんだし」
っ!?
「はあ?
なに言って…」
「知りたい?
保健室でみちると―― 」
「やめてっ!!」
感情的になったみちるの声が、廊下中に響き渡った…
いつもと違う様子に、楼は驚いたようにみちるを見つめた。
「みちる…?」
「ごめんなさい…ごめん なさい…!!」
目から大量の涙がこぼれ落ち、泣きじゃくるみちる…
その姿を目の当たりにした楼は、ガッと突然森崎の首を掴み上げた―――
