月夜の下で…
第6章 ~ 想いの果てに ~
その頃みちると楼は、愁の父と向かい合うようにソファーに座ってコーヒーを飲んでいた。
「森崎先輩…
愁と話しでもしてるの かな?」
「そのうち来るだろ」
「みちるくんには感謝し ている」
「え?」
愁の父は、真剣な面持ちで口を開いた―――
「愁に‥思いやりと、人 の痛みを教えてくれ
てありがとう」
「…愁は…
会う前から‥そうだっ たと思います
ただ‥それが裏目に出 て
うまく伝えられないだ けで‥‥
だから‥ちゃんと理解 してあげて下さい」
「みちる…」
「…そうか…
ありがとう‥みちるく ん…
きみには人を惹きつけ るなにかがあるようだ
だから…愁も夢中にな ってしまったんだろう 楼くんもな」
「まっまぁ…」
楼は、少し照れた様子で目を逸らした。
「聞きたいんですけど… 愁ってお母さん似なん ですか?」
「いや…実はどっちにも 似ていないんだよ…」
「そう‥なんですか
でも‥目がどことなく お父さんに似てますね っ」
「そう言ってくれると嬉 しいよ」
他愛のない会話が続き、外はすっかり暗くなった頃…
途中で森崎と別れ、夜道を並んで歩いているみちると楼の姿があった。
「愁の実家がバスで30分 のところにある高級住 宅街にあったなんて
ちょっとびっくりっ
それにすっごく広かっ たし!」
「たまに集まりがあるか らな
ちなみに、その資金は 株で儲けてるらしい」
「株…!?」
いろんな意味ですごい 人だなぁ…
「ボスはあの時言わなか ったけど
愁さんの母さん‥愁さ んが小さい時に亡くし てるんだ」
「えっ…」
「…今日は‥月がキレイ に見えるな‥‥」
立ち止まり空を見上げてみると、雲一つない夜空に綺麗な満月があった。