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ふたりのうた

第1章 ふたりのうた

一度喧嘩して「大嫌いや!!あほ!!」と叫んで家を飛び出したときも同じ顔をしていた。

「…なら、ほんなら今まで俺はなにしてきたん?」

ずっと髪をつかんだままだった左手をつかんで、まっすぐ俺に呟いた。

「俺はずっと好きな人を汚して来たん?なあ、お前はずっと俺に汚されてるって思ってたん!?」

「…俺は…汚されてもヨコならいいと思って…」

「……そんな風に考えてたんや。今までごめん。」

白く綺麗な手が俺から離れていく。

「…どいて。“メンバー”に戻ろう。」

肩を強く押してくる白い腕を俺は必死につかんだ。

「なんでそうなんねん!!」

「俺かてそんな考えやったら汚したないわ!!だって俺もひなのこと好きやから!!」

着ている白いブラウスの肩にシワが寄る。

「ひなの体が汚れてるなんて思ってないし、汚してるなんて思いたくない。…これから愛を確かめる度に汚していくなんて…耐えられへん。俺はただ、ひなが可愛くてしゃあないだけやのに…。」

珠が転がるように肌の上を涙が落ちる。

その涙が染み込んで茶色い鞄の色を変えた。

「…ごめん。俺さ、ずっと不安やってん。」

こぼれる涙を親指で吹いてやりながら気付けば思い付くままに口を動かしていた。

「ヨコの顔を見てると、いつもにやにやしてんねん。それがさ、ドラマでよく見るヨコのたくらんでる顔そのままやねん。せやから、俺はヨコにとって…ただのおもちゃなんかなって…。」

「…アホやな。」

手がブラウスから離れて、ゆっくりと顔に上がってくる。そして唇を撫でて頭に回し、グッと押してきた。

抵抗することなく、その力に任せて、俺とヨコはやさしい口づけをした。

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