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“好きなところ”

第2章 Dye D?


「僕が、信ちゃん家に来たこと、亮には言わんとって。亮には、僕の気持ち悟られたくないから…。」

「…ヤスの…気持ち?」

「信ちゃんはなんも知らんでいい。」

知らなくていい。本当は亮が横ちょのことが好きで、信ちゃんが横ちょのことを好きなのもわかってて、進展されるのが嫌で誘い続けてたことも、僕が信ちゃんのことが好きで、だけど亮のことも忘れられなかたったからあえて二人には触れなかったことも、二人の口づけを僕らが見ていたことも。

…なにも、知らなくていい。

「信ちゃん。…横ちょのこと、大事にしたってな。…ちゃんと、何があっても、信ちゃんは信ちゃんを貫いてな?」

もう、目を合わせることはできない。

信ちゃんとも、亮とも。

必要だった。二人とも。

でも、今は二人とも僕のそばにはいない。

自らけりをつけたんだ。

叶わない、叶ってはいけない恋に。


信ちゃんの家から僕の家までの短く、長い距離を月明かりが照らしている。

今夜もきれいなつきで、明日には満月になっているだろう。

帰ったらアルバムに入れる曲を書かないといけない。

この月が満月になるまでに、気持ちを入れ換えないと、またあの日に戻ってしまう。

お互いに幸せになろうと誓って進んだ道。…僕は幸せになれるんだろうか?

まだ作りかけの歌を口ずさむ。

ゆっくりと確実にメロディーを刻んだ。

「Welcome to the Board of dark moonlight night…」
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