
words
第2章 クラゲ
しかし、その扉はすぐには閉まらず、その間に僕を押して、大倉が玄関に足を踏み入れた。
「…聞いてたん?」
笑顔のなくなった大倉の顔がすぐ目の前にある。
「……これ、取りに行こうとしたら…。」
目を反らせないまま握った拳を少し前に出す。
小さくため息をつくと出した拳をつかんで僕を引き寄せて、そっと抱き締めた。
「そんな関係やないねん。…あれはすばるくんに無理やりさせられただけ。信じて。」
このとき、離れなきゃと思った。信じろと言われても信じれるわけがなかった。
だけど、同時にそれでもいいと思った。例え、僕が浮気相手やったとしても、構わなかった。
「…大倉。僕と横ちょの関係も、そんな関係とちゃうで。横ちょが僕の心配をしてくれてただけ。」
力を抜いていた腕をゆっくりと抱き締める。
横ちょとは違った暖かさに、ずっと貯めていた涙が一筋、こぼれて落ちた。
「…僕、大倉のことが…好きやねん…。ずっと…好きやった。」
「…俺も、ヤスのこと、好きや。……俺の…側に、おって?」
僕はただ黙って強く抱き締めた。返事なんていらない。
今は二人の間の距離なんてないのだから。
