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背徳の雨

第3章 ケガレ



ホテルを飛び出すと
すぐに私は
行き着けのネットカフェへ走った。
顔に飛び散った血。
店員に気付かれないよう俯き、
風呂を借りた。
身体を洗い流し、
今日はオープン席しかないからと
仲の良い店員さんに言われ
初めてオープン席を取った。

周りには誰もいなくて
椅子に座ると私は絵里にメールをした。
心配いらないから、と。

メールを送ると
すぐに椅子の背もたれに身を委ね
ネットカフェの内装を見渡す。

黒で統一された内装。
かなり暗い店内。
落ち着いた雰囲気の
このネットカフェが大好きで
毎日通ってた。
割高だったけれど、満足していた。
泊まるだけじゃなくて
いつかここで働きたいな…なんて。
さっきの事を忘れる為に
そんな事を考えて
気が付けば眠りについていた。

──コト…──

何…?

私の席の机から何か物音がして
恐る恐る目を開く。

紙コップ…?

寝る前には置いていなかったはずの
紙コップが置いてある。
中身はなんだろう、と気になるが
身体が重くて動けない。
私は目を開けたまま
ボーッと紙コップを眺めていた。

「おはよう」

どこか独特な、低い男の声。
ゆっくりと声がした方へ
椅子ごと身体を向けると、
黒いスーツを着たホストが座っていた。

「こんな所で無防備な寝顔晒して…」

くすくすと笑う彼。
でもその笑みは黒く、歪んでた。
細く切れ長の鋭い瞳。
その奥もまた、
どす黒いものが見える。

「俺は雫。君は?」

「馨…です。」

あくまでも偽名だ。
本名なんて晒せない。
良い名前だね、と
甘いフェイスで微笑む雫。

切れ長の瞳を細め、
右斜めに背を向けて座る、
赤髪の男の子を指差す。

「彼は虎太郎。俺の親友。」

彼は虎太郎の紹介を終えると
色んな話や手品などをしてくれた。
そして私は
まるで雫に取り憑かれたかのように
彼の話に食い入り、
彼の瞳から目が離せなかった。

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