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背徳の雨

第5章 儚く、脆く



幸いにも背中の傷は浅く、
案外早く完治した。

あの出来事から心配性の白狐は
私に自らの洋服を着せ

「お、意外と似合うじゃん」

「そうかな?」

男装しないと外出出来ない事になった。
初めての男装。
髪を逆立て、筋盛りにすれば
なんだかそれっぽい。
いつもとは違う自分を鏡で見て
ちょっと何かが芽生えた気がした。


ひっかけ橋。
綺麗に着飾ったホスト達が
橋を占領している。
男装をした私に視線が集中して
なんだか居心地が悪い。

私、ブサイクだから仕方ない…。

下を俯き、
ジャケットの襟を直す。
早く橋を渡り切りたいと、
早歩きをする。

気まずい。

ホスト達の視線が痛かった。
早く早くと
橋を渡り切ろうとした時

「お兄さん」

若い男の声。
彼は私を男だと勘違いしているようだ。

「はい…?」

敢えて訂正はしない。
顔を上げ、返事をする。
隣に夜中なのにサングラスをかけた、
長身の男がいた。

「君、かっこいいから
ホストとかしてみない?」

きっと売れるよ。

僕の目に間違いはない、と
彼は言った。

女だけど…いいのかな?

私の頭に過った疑問。

「女だけど…いいですか?」

もじもじしながら彼に問い掛ければ
彼は目を丸くした。

「女の子なの?!」

酷く驚いた顔をした男は
そう言って少し沈黙したが
すぐに

「君なら構わないよ!」

頷いた。
そして私の手を引いて
ホストクラブへ見学に行った。

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